-Story04- ついにデビュー!黄金そだちの平飼いたまご

新商品「黄金そだちの平飼いたまご」を生産する北海道種鶏農場(白老町)を訪れたわたしたち取材班。前回は平飼い養鶏にチャレンジしたいきさつから、新しく採用するエイビアリー方式について川上社長に聞きました。今回はその続き。「黄金そだちの平飼いたまご」の魅力をフカボリします!

—ケージ飼いとエイビアリー方式の平飼い。両方を実践する中で平飼いならではの苦労や難しさを感じることはありますか?
ひとつは管理面です。ケージ飼いの場合は6〜8羽ごとに部屋が分かれているので1羽ずつに目が行き届き、異常があればすぐに発見することができます。エイビアリーは鶏舎内で鶏が自由に動き回ります。一番の懸念は鶏が興奮してしまったときの危険性です。うちは1万4,000羽をおよそ5,000羽ずつに区画分け管理していますが、もしその5,000羽が何かの拍子でパニック状態になり、鶏同士が重なり合ってしまったら、乗っかられた鶏は圧死してしまいます。そうならないよう見回りはできるだけ慎重に行う必要があります。

巣外卵のリスクもあります。平飼いでは、鶏が暗い所で産卵する性質を利用してネストと呼ばれる巣箱の中で卵を産ませます。ところが必ずしもうまくいかず、ネストの外で産んでしまう場合があります。これを巣外卵といいます。巣外卵は人間が見つけて拾って歩かないといけません。放置すれば、割れたり、腐敗したりして不衛生です。もし仮に巣外卵率が3%なら、1万4,000羽ですから毎日400個余りを手で拾うことになる。
巣外卵率10%なら1,400個。こうなるとかなり重労働です。育て方や設備の工夫で、できるだけ巣外卵率を抑えることが重要となってきます。

—巣外卵を集めるために人間が鶏舎に入らなくちゃならないし、だけど鶏を驚かせちゃいけないだなんて、なかなか大変ですね。

—平飼いはケージ飼いに比べて、とても手間がかかることがわかりました。
そうですね。労働負担が大きいということはその分、人件費がかかるわけですから、卵の販売価格にどうしても反映せざるを得ません。

—平飼い卵が「高い」のにはそうした理由があるんですね。
大切なのは、どういった飼養方法なのかを理解した上でお求めいただくことだと思います。高いから「おいしい」とか、安いからどうのとか、そういう単純な話ではなく。
実は日本では平飼いの定義があいまいです。たとえばEUは1.飼育密度は1m²あたり9羽以下、2.敷料エリアは1羽につき250へcm²以上かつ鶏舎床面の1/3以上、3.止まり木は1羽あたり15cm以上、4.巣箱(ネスト)は120羽につき少なくとも1m²の割合で設置されていることなど、数多くのルールが定められていますが、日本にはそれがない。飼育密度も、止まり木の長さも、特に決まりがありません。うちとしては何らかの「裏付け」がほしかったので、今回取り組むエイビアリーはEU基準をすべて満たすことにしました。さらにいえば、動物愛護団体ザ・ヒューメイン・リーグ・ジャパンが定める「高いアニマルウェルフェアを担保するケージフリー生産の基準」もクリアしています。

—今回の「黄金そだちの平飼いたまご」は、エサにも基準があります。
はい。「黄金そだち」は飼料に道産米を10%以上配合することが定められています。うちはそれに加えて亜麻仁油を飼料として与えています。

—亜麻仁油ですか?
ええ。ご存じの通り、亜麻仁油はオメガ3(n-3)系脂肪酸であるα-リノレン酸を多く含み、毎日の食生活に取り入れることでさまざまな生活習慣病の予防や改善に役立つとされています。

—パッケージは再生紙を活用していますね。
そうですね。環境負荷低減の観点からプラスチック容器ではなく、容器には再生紙を採用しました。そのために専用のパック詰め機も新調したんですよ。

—コープさっぽろの店舗では8月21日から1パック6個入り298円(税込322円)で販売します(※)。
1個あたり約50円です。これを高いとみるか、安いとみるかは、人それぞれでしょう。「黄金そだちの平飼いたまご」は、取り組みに共感いただける方に手に取ってもらえたらいい。われわれとしてもムリに数を追い求めるのではなく、それに見合った量を生産できればいいと考えています。

祖父が名寄で養鶏業を始めてから90年余りがたちます。その間に養鶏技術は格段に向上し、養鶏方法も、養鶏を取り巻く状況も大きく変化しました。ただしどんなに世の中が変わっても、人間が食べるという行為をやめない限り社会にとって食の仕事は必要で、僕自身この仕事をとても誇りに思っています。
現代は誰でも簡単にさまざまな情報にアクセスできるあまり、反対に、正しく理解することがとても難しい世の中になっています。そうした中で、飼い方を含めできる限り情報をオープンにして、組合員さんにはそれを理解した上で、自分が良いと思う卵を選択してもらえたらと思うんです。うちはケージ飼いの卵も生産する、コープの「不揃いの玉子たち」も引き続きやっていく、殻がさくら色の卵も扱っているし、赤い卵もある。今回、そこにエイビアリーが加わった。さまざまな選択肢から自分が気に入った商品を買っておいしく楽しんでもらえたのなら、僕としてはたまご屋冥利に尽きます。

少し先の話をすると、ゆくゆくは「黄金そだちの平飼いたまご」に道産米だけではなく、北海道産の子実コーン(飼料用トウモロコシ)も取り入れる計画です。これからも、少しずつでも地元のものを使っていけたらなと思っています。

—今後の展開も含め、お話を聞かせていただきありがとうございました。道産飼料米の活用により休耕田の有効活用や地産地消の推進につながる「黄金そだち」シリーズと、平飼い養鶏が融合して誕生した「黄金そだちの平飼いたまご」。いよいよコープさっぽろの一部店舗や宅配トドック(9月4週ほか)での取り扱いがスタートします。目玉焼きや玉子焼き、TKGに。わたしも卵の背景に広がるストーリーを家族に話しながら味わってみようと思います。

※価格は2023年8月21日現在の店舗での価格。宅配トドックでの販売価格は異なる場合があります


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