Vol 01. Novacoopとは? ~北イタリア ピエモンテ州を拠点とする消費者生協~
Novacoop概要と食教育の変遷
Novacoopはイタリアにある9大生活協同組合の一つで、ピエモンテ州を拠点とする消費者生活協同組合。組合員数は、約70万人で、イタリア生協全体で700万人なので、イタリア全体の1/10程度の規模(2013年7月現在)。従業員数は4,775人、店舗は、ハイパーマーケット16店舗、スーパーマーケット47店舗、取扱商品は、食品・家電など生活用品全般と多岐に渡っており、北イタリアの消費者の生活基盤を支える小売りの一つ。
Novacoopの食教育
Novacoopの食教育は、30年程前の1980年からスタート。子どもたちの食をもう一度見直すことを目的に、北イタリアの3つの協同組合であるNovacoop ・CoopLiguria・Coop Lombardia」のコラボレーションから始まり、現在までにNovacoopだけで延べ20万人の生徒たちがプログラムに参加している。
プログラムの大テーマはイタリア生協が毎年設定し、その中からNovacoopで実施すべき内容だと思ったものを取捨選択し、実施していた。Novacoopの食教育は、生活協同組合の一プログラムとしてだけではなく、学校での授業の一環としてプログラム化され、小中学校と連携し、プログラムが実施されている。プログラムの主な対象は、学校の先生及び、幼稚園(5才児)~高校生(18-19才)で、1999年からは国の教育省との間に協力協定を締結され、国からのお墨付きを得た状況で、実施。学校の先生の教科も音楽や数学、国語、英語など多岐に渡っており、幅広い学習分野教育に対応できるプログラム構成をしていた。
消費者プログラムを運営しているのは、社会福祉部門内に消費者教育に特化した部門が設立され、店舗の運営部門とは別に、事業の独立性を維持したかたちで運営されている。2012年の実施概要を見てみると、プログラム数は1,200回で、1クラス2回のプログラム構成が主の為、実質2,400クラス実施されていた。プログラムを実施する講師は、消費者教育専門に雇用された「アニマトーレ」と呼ばれる人たちで、計12名が1年ごとの契約職員としてプログラムを担当していた。参加自治体は150、参加校は250に及び、2012年だけで25,000人もの生徒たちがプログラムに参加していた。
消費者教育担当者「アニマトーレ」とは?
先に触れたNovacoopの消費者教育担当者は「アニマトーレ(ANIMATORE)」と呼ばれる。アニマトーレとは、イタリア語で「元気や活気を与える、盛り上げ役」という意味で、生活協同組合の消費者教育担当者だけでなく、教育農場でプログラムを実施する生産者の皆さんや、病院で患者さんを元気づける方など、イタリアのあらゆるところで活躍している。特別な資格は必要ない。日本における先生とは異なる、人に何かを伝える、元気づける存在で、イタリア独特の考え方。アニマトーレの存在をご説明いただき、イタリアの各地で多くのアニマトーレに出会う中で、北海道を盛り上げるアニマトーレがこれからたくさん生まれてほしいと願うと同時に、私自身もその一員になれたら嬉しいと感じた。
Novacoopの教育プログラムで大事にしていたこと
Novacoopの消費者教育プログラムの基本理念は、大きく2つ掲げられていた。1つは、自身で食べるものや購入するものを自分自身で「選択・判断する眼」をもってもらうこと。そのため、販売商品のラベル表示の見方や、理解に関するプログラム内容が多くの場面で取り上げられていた。2つ目は、実体験を大事にしていること。店舗での商品選びや組合員へのインタビューなど、販売の現場を持っている小売りとして、学校では体験できない購買・消費の実体験をしてもらうことを大切にしたプログラムを実施していた。
また、コープ商品を選んでもらうための教育を決してしているわけではないというのもNovacoopの教育プログラムの特徴。イタリアはヨーロッパ諸国の中でも一番ペットボトル入りの水の購入率が高い国で、Novacoopの店内でもたくさんのペットボトル入りのミネラルウォーターが販売されていたが、環境のためにも、近くの水源でとれる水道水を飲もうという「水」に関するプログラムが実施されていた。
販売には決して繋がらない、むしろ商品を否定するようなプログラムを実施する理由について、プログラムをしていたアニマトーレに質問したところ、「生活協同組合として誕生した意義、現在の販売活動のバランスを取るためにも消費者教育は非常に重要な活動であり、こうした水のプログラムを行うことも、結果的にはNovacoopの“信頼・信用” に繋がることだと考えている」というコメントをいただいた。この消費者教育に対する考え方は、生活協同組合として非常に重要な考え方であり、将来の消費者の育成という観点からも、忘れてはいけないことだと感じた。
コーディネート・通訳:中野美季
2013年4月 星野浩美