Vol 12. バスククリナリーセンター(Basque Culinary Center :BCC)

バスククリナリーセンターとは?

設立:2011年9月

成り立ち:バスク地方で活躍するシェフや料理関係者が、「料理をすることがほかの学術研究所の様な社会的な地位をもち、医学や建築学のような大学資格を取れるようにしたい」という、彼らの夢の形の一つ。そらがバスククリナリーセンター(以後、BCC)。

位置づけ:4年生の料理専門大学。大学卒業後は、学位が授与され、モンドラゴン大学の4つ目の学部として位置づけられている。(モンドラゴ大学は、BCCの他、工学部、ビジネス学部、人文教育学部をもつ)

BCC設立の支援先:スペイン政府、バスク州政府、ギプスコア県政府、サンセバスチャン市が支援。1800万€(20億近く)を投じて作られた。

BCCのベンチマーク的存在:イタリアのピエモンテ州ポッレンツォという村の「食科学大学(University of gastronomic sciences)」。スローフード協会本部によって設立された教育機関。

BCCの教育:ハイレベルな知識の生成と有能な専門家の訓練、高度な料理の専門家やビジネス分野、直接・間接に美食に関連する食科学の他の領域に、技術や知識の移転を促進させること。

BCCの目指すところ:上記の教育によって、国際的なセンターとしての地位を担い、新たなビジネスやプロジェクトを創出し、関連産業における技術移転や技術革新の促進をすること

BCCの講師陣:現在専属の講師は20名。世界各国からスカウトし、特別授業の実施も多い。そこには、世界の有名シェフが多数招かれ、ライブ授業などを実施。日本人シェフ(NARISAWA、成澤由浩氏他)も講義をしている。食関連の専門家(テクノロジー・医学など様々)が招かれることも多い。

評議機関:モンドラゴン協同組合企業の教育部門であるモンドラゴン大学が中心。

諮問機関:国際顧問委員会Consejo Asesor Internacional(グループG9)が設置されている。委員長はスペインのカタルーニャの世界的に著名なレストラン、エル・ブジ(El Bulli・2011年7月30日閉店)のフェラン・アドリア(Ferrán Adriá)氏で、美食に関して最も重要な国々9カ国のトップシェフ9人により構成され、BCCの戦略についてアドバイスを行っている。


シェフ協議会(Chefs del Patronato):マリ・アルサック、マルティン・ベラサテギ、ルイス・アドゥリスなどの三つ星レストランをはじめとする、バスクのトップシェフたちが定期的に会合を持ち、今後のBCCの戦略を議論するとともに、彼らのもっている強大な知識を共有しようとするもの

学生:400名(各学年100名)、マスターコースも含めると800名程度(マスターコースは専門家・プロの料理人向けの専門コースで、3か月などの短期間もあり、人数は変動的)。年間の授業料は、8,500€(90万円程度)

地域の方へ活動:日本で言う「地域に開かれた大学」。地域の人々の食への関心を高め、美食文化の向上を目指して様々な事業を実施。ネット上ではBculinary ClubのFacebookページを、Twitterでもbculinaryclubを開設し、情報の発信、共有を行うとともに、リアルのイベントなどの事業を展開。世界のシェフや食の専門家を招待し、講演会などを実施。

BCCと日本の関係:日本では服部専門学校とが関係が深いようである。今年からは、シェフの成澤氏が日本の代表を務めるとのこと(現在は非公開の情報)。

場所:サンセバスチャン市の南部郊外の丘陵地帯に位置する。もともとは丘で、地域の皆さんがピクニックをするような場所で、今後数百年は建物はててないという場所だったが、市や州政府も支援をしたこともあり、この場所に建設された。

建物:建物は5階建。建物の裏手に回ると、皿を5枚重ねたようなユニークな外観。入口は建物の5階。5階から降りていくイメージ。

レストラン・カフェテリア:学生が運営するレストラン・カフェア。1グループ20名程度で、8グループが週替わりでランチメニューを出す(ランチだけ)。地域の方々に大人気!3年生(上級生)のクラスは特に人気があり、予約は3か月先までいっぱいとのこと。

教室:食に関わる様々な体験ができる環境が作られている。イタリアの食の科学大学でもあったような官能分析研究室(sensory analysis laboratory)も作られており、ワインのテイスティングなどの講義で利用されている。また0階(日本の1階)には研究者向けのラボラトリーがあり、現在12人の研究員がいらした。企業とコラボレーションによる新製品開発や、食生活、老化など、食に関わる幅広い分野の研究がなされているとのこと。2、3年で25人まで研究員を増やしたいとのこと。

※BCC情報に関しては、取材を元に「上村文書ブログ」を参考に記載

BCCの学生による特別ランチ

BCCでは学生グループによるランチメニューの提供を行っている。
この日体験したのは、2年生。1週間ごとにグループは変更される。費用は24€。ワイン3杯(6€)を入れて、30€。結構なお値段(3,750円程度)
この日は、スペインの地方料理がテーマ。「アンダルシア・ギリシア・カタルーニャ」の3つの地域の食をテーマにし、各地域の伝統的な食材や調理法をベースにしながら、前衛的なアレンジを加えてオリジナルのメニューが提供された。

サーブの手が震えていたり、お食事が少しぬるくなってしまったり、ポストレ(デザート)のマカロンが落ちてしまったり、ハプニングもいろいろなりながら、目の前でパフォーマンスをしながらサーブしてくれるのが楽しかった。他では味わえない「体験」ができる場所。

広報部長であるホセ・ルイス(通称:ヤヨ)さん
丘の上にあるBCCの外観 5階が正面玄関 教室には降りていく感じ。 ちなみにこの日も雨、冬のバスクは雨がとっても多いとのことです!
BCCのモニュメント
講堂、世界各国から食のスペシャリストが講演に来る
全てではないが、各教室にスポンサーがついている
味覚教室-ワインのテイティングの授業などに使われる
カフェの販売機の前で、先生と学生がディスカッションする風景
ポストレ(デザート)の先生 世界的に有名?!
大学院研究室
老化などについて研究している研究員
今日のランチを一所懸命作っているBCCの学生
サービスについても学ぶので、ちゃんと予約者リストを確認し、ご案内
お出迎えはウェルカムカクテルで(もちろんアルコール入ってます)
目の前でパンを切ってサーブ
一皿目。パン&生ハム
エル・ブジ的分子料理を取り入れた前菜
ワインの説明がとても上手でした
棒餃子?ちょっと皮が粉っぽい?(笑)
お野菜にチーズのソース
マグロのお料理、ソースはイチゴ・オレンジなどのフルーツで
次はお肉料理。首の後ろの柔らかい、脂肪分のあるお肉を低温調理したもの
チーズの盛り合わせ。 目の前で取り分けてくれました。ライブ感、見ながら食べられる面白さがあります
お口直しのプレデザート。 凍ったマンダリンの皮にフルーツのプリン、そしてシトラスの泡状のシャーベット
「これは美味し!」と思ったチョコレートケーキ 絶品
ダメ押しのデザート!マカロン、ふっわふわのマシュマロ、 ヘーゼルナッツの香りが効いたチョコレート、それに飴細工の袋に入ったゼリー

※本記事は、高城剛(2012)『人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか―スペイン・サンセバスチャンの奇跡』祥伝社新書,P154および、「上村文章ブログ」,2012.11.2 http://akifumiuemura.blog18.fc2.com/blog-entry-248.htmlと筆者取材を元に作成

2016年3月2日(水) 星野浩美

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