2024.11.25

-Story01- 「組合員さんの声を形に」 黒子に徹したバイヤーの話


コープさっぽろの組合員さんが主役となって作る濃厚つゆ開発ストーリー。トップバッターはプロジェクトの言い出しっぺである杉野翔梧バイヤーです。組合員さんと商品を作るのにあたって杉野バイヤーが大切にしたのは、とにかく黒子に徹すること。目指したのは、「誰かに教えてあげたい濃厚つゆ」でした。

——今回の濃厚つゆ開発プロジェクトは杉野さんの発案だったと聞きます。なぜ、このプロジェクトをやろうと思ったのでしょうか?
組合員さんを巻き込んでコープさっぽろを代表するような商品をイチから作ってみたいという思いがずっとありました。「コープさっぽろを代表する」という以上、皆さんによく使われるカテゴリーがいい。そう考えて濃厚つゆでいこうと決めました。

濃厚つゆは、売場をご覧になってもわかるとおり、ものすごくたくさんの種類があります。価格もさまざまです。商品としては既に出尽くしていて、差別化が難しいカテゴリーでもあります。だからこそ「組合員さんと一緒に作る」意味があると考えました。販売側の戦略ではなく、実際に使う組合員さんの声を吸い上げて組合員さんの思いに応えるつゆができたら一番の差別化になるんじゃないか。それが、このプロジェクトの出発点です。

——製造パートナーを、にんべんに決めたのはなぜですか?
共感できる部分が多かったからです。原料へのこだわりや、余計な添加物を極力使わず天然素材のだしを大切にする姿勢は生協に通じる部分でもあります。実際にコープ商品を手がけてもらった実績もあることから、組合員さんのリクエストに応えてくれるんじゃないかと思ってにんべんさんに声をかけました。

——商品づくりにあたって大切にしたことは?
最初から最後まで組合員さんにお任せしようと決めました。私が口を出すと「いつもの商品」になっちゃうので、どう転ぶか分からないけれど、自分の考えは捨てて組合員さんにすべてを決めてもらいました。コンセプトも、容量も、味の方向性も、全部。商品づくりに関して、私はなんにも仕事していません(笑)。
結果的に私一人では絶対にできないような商品に仕上がりました。

——というと?
たとえば味の方向性に関しても、私のイメージではちょっと甘くて濃いめの味が北海道の方に好まれるのかなと思っていたのですが、実際にアンケートを取ってみると、「濃すぎず、だし感が強く、何にでも使えるつゆがいい」といった声が多くありました。そんなふうに最初の段階から、私が想定していたものとは違う方向に進みました。

そういう中で、やっぱりコープさっぽろの組合員さんは地元への思いが強いことを実感しました。極力北海道のものを使ってほしいということで、醤油の原材料も北海道産大豆と北海道産小麦を使用したものを選んだり、うまみの決め手となる昆布は十勝・広尾町の「星屑昆布」という、昆布を製品化するときに出る端材を活用したものを使用しました。にんべんさんにとっては初めて使う原料ばかりで、仕入れを含め、相当大変だったと思います。

——印象的なエピソードはありますか?
最終段階で原料と価格が異なる二つの製品に絞り込みました。一つは北海道産大豆を使用した高価格帯のつゆ、もう一つは輸入大豆を使用して価格を抑えたつゆです。私は組合員の皆さんに「おすすめしたい商品はどちらですか?」と尋ねました。すると「高くても良い原料を使った商品がいい」という声が圧倒的でした。生協らしいですよね。結果的に、本当に自信を持っておすすめできる商品ができたと自負しています。

——マーケットの動向を熟知し、バイヤーとしての経験もある中で、どうしても「物申したくなる」場面もあったかと思いますが、そういったバイヤーのセオリーよりも組合員さんを信じることを選択したのはなぜですか?
私は1年半前に日本生協連からの出向でコープさっぽろに来ました。コープさっぽろで宅配トドックのバイヤーを経験する中で、組合員さんに商品を手に取ってもらうには商品力や価格などの条件だけではなく、地域担当(配達スタッフ)の声かけであったり、組合員さん同士のおすすめといった「ひとの力」の大きさをすごく感じました。なのでこの商品は組合員さん自身が「おすすめしやすい」「誰かにすすめたくなる」つゆにしよう。それがこの商品の一番の力になると思いました。

おかげさまで本当に生協らしい商品ができました。ここからはいよいよ私の仕事です。商品の露出機会を増やすことはもちろんですが、今回は原料に星屑昆布を使っていることもありますので、商品の購入によって生産者さんを応援できるような仕組みを作り、エシカルを体験してもらえるような商品にしていきたい。そして最終的には、コープさっぽろを代表するような商品に育ってほしいと願っています。

——杉野さん、ありがとうございました。次回は製造を手がける「にんべん」のインタビューをお届けします

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