Vol 06. ワインバンク
ワインバンクとは?
1950年代、イタリアのワイン業界は混乱の時期にあった。ペトリーニ会長がこのサボイ王家の農業実験場を再建し、イタリアのワインの評価を再び高める取組みをしようということでワインバンク事業が始まった。
イタリアのワインの歴史の中で、非常に大きな問題が発覚したのが、1986年のメタノール混入事件である。イタリアワインのイメージが一気に下がってしまった事件であった。その当時のイタリアのワインの生産者たちは、安いワインを大量に販売することばかり考えていた結果起こってしまった事件であった。この事件の教訓から、イタリアのワインを復興させ、再びワインの評価を上げ、偉大なるワインを作ることを目的としてワインバンクは設立された。
その結果として、90年代はイタリアのワインが再評価される時代となった。その背景には天候に恵まれ、よいワインを作ることができる土壌があったとも言える。特に‘90年、’95年のワインは売れている。熟成に耐えうる良いワインである。特に熟成に関しては、熟成させようメンタリティがなければ、良いワインを作っていくことができない。そのためにワインバンクを設立した。
ワインバンクはワインセラー・倉庫・博物館を兼ねている。ワインバンクは設立してから5年ほど経っている。300の生産者をセレクトし、ワインバンクに納入している。そして預けられたワインは、適切な段階まで熟成が行われる。
ワインバンクにあるワインの所有者はワイナリー。3、4年間はほぼそのままで触らない。ワインは生産者にとって財産の様なもの。しかしワイナリーにあったらやはり売ってしまう。よいワインを適正な段階まで熟成させるためには、やはりワインバンクのような存在が必要。またワインバンクでは、ワインを売る手伝いもしている。ワインバンクでは、何年も適切な時期までとっておき、熟成することによって、ワインの歴史的な記憶を残すとともに、ワインによってワイン産地をアピールできるようにしたいと思っている。ワインバンクでの保管期間だが、2017年に訪れた際には、10年保存するとおっしゃっていたので、ワインバンクでの保存期間が延びている。
ワインバンクのメンバーは、インターナショナルメンバーは50名程度(2010年現在)
ワインバンクの内装は、ローマ時代、中世時代、1800年代、現代の4つの時期の歴史を大切に保管している。
ポレンツォは古代ローマ時代大変栄え、1万以上の人々が住んでいた。王様が別荘として頻繁にトリノからポレンツォに来ていたことから、王様のための料理を研究する必要があった。そのため、その食事に合うワインも同時に重要視された。このポレンツォという場所は、食を研究するための歴史的なバックグランウンドを持っている。
ワインの貯蔵方法は、3つ。赤・青・黒のスタンプが外装に押されている。赤はテイスティング用で授業にも用いられる。青は長期保管・バンク用(10年以上)、黒は販売用に分けられ、管理されている。
ワインにとって土は非常に大事。味に大きくかかわることから、それを知ってもらうために、土も一緒にディスプレイされている。このアイデアもカルロ・ペトリーニらしい。
ワインバンク内の室温は常に16度、湿度80%に保たれている。
現在ワインバンクにあるワインの種類は150種類。総資産価値は500億と言われている。
ワインバンクからの気づき
北海道もワインの醸造家が増えていることから、あるといい。ただ、イタリアのワインバンクの背景には、「食」がいつもある。その土地の食を美味しく楽しむために、ワインは欠かせないという食文化としての背景があるからこそ、その重要性を際立だせることができている。
そう考えると、北海道においても、「北海道らしい食事とお酒」の追求があって「ワインバンク」が作られるのが望ましい。しかし、歴史は簡単には作れない。北海道の場合は、「新たに食の歴史を作っていく」この「創造性・新しさ」が根本的な価値になりうると感じた。
※ワインバンクの記事も、2010年 筆者視察時の記事を元に加筆
コーディネート:GEN株式会社 齊藤由佳子
通訳:Pier Giorgio Girasole
2017年3月8日(水) 星野浩美