Vol 14. エロスキー生協の消費者教育
エロスキーの消費者教育とは?たくさん情報交換できた幸せな時間
店舗視察が終わると、いよいよ消費者教育を実践しているエロスキー財団へ。スペイン最大の生協は、どんな消費者教育をされているのか、伺うのを楽しみにしていた。
対応してくださったのは、エロスキー財団の責任者「Eduardo Cifrian」さん(結構えらい方だと思われる。結構映像に出てくる)。彼のアポを取るのはなかなか難しいらしい。ありがたい、ありがたい!
さっそくお話を伺うことに。お部屋のAV機器の調子が悪く、彼のPCを隣で見ながらお話を伺った。スペインの法律で、利益の10%を社会に還元することが義務付けられており、その事業を行うのが「エロスキー財団」。1997年に設立された。この財団の柱は4つ。
1つ目は、消費者との「コミュニケーション」。その一つの媒体として、無料の情報誌を作成している。店舗で見たあの雑誌である。現在の発行部数は18万部。15年前は40万部発行していた。発行部数が減少した理由は、オンライン化。現在、月平均600万人が閲覧している。我々もweb環境の整備は急務だと感じた。情報誌の内容は、健康、食、飲料、レシピ、日曜大工などで、毎回8~10のトピックスで構成されている。先にも述べが、バスク語とスペイン語の2種類作成される。普通に考えると同一内容で2種類すらなくてはならないのはダブルコストでもったいないな~とも感じたが、バスクの人々にとってこれは当たり前のこと。さすがバスク地方だと、文化色の強さを改めて感じた瞬間だった。
2つ目は、食の安全性の確保。衛生面をかなり細かくチェックしている。また廃棄0(ゼロ)の取組として「フードバンク」的な取り組みを実践。昨年は500万€分の食料を提供。これは1万人の人口の街であれば、1年分の食料を賄えるという。フードバンクの対象は、災害にあった方、難民、貧困層など。チャリティーイベントにも協賛している。
3つ目は、環境。色々な取り組みをしているが、エコ店舗の建設もその取組の一つ。「Green Shop」と名付け、一般的な店舗の電力消費の60%省エネ化を実現。これには特別プロジェクトが組まれ、15年くらい前から取り組んでいる。実践に当たってはスペシャリストを招集。スペイン政府の支援も受けている。リサイクルエネルギーにも力を入れている。これは、コープさっぽろと方向性は同じだと感じた。
最後が、子どもたちへの食のプログラムの提供である。最も知りたかった部分。4年前から子どもたちの食生活・食習慣を改善するプログラムを医師、大学教授、他の専門家と一緒にとの協同開発で作成。学校・店舗にてプログラムを実践。というのも、ヨーロッパの中で最も肥満の子どもの数が多いのがスペインとのことで、コープイアリアでも推進されていた「地中海式の食事法」を座学・店舗での買い物体験で実体験するプログラムを開発している。具体的には、エロスキー財団のプログラムに興味がある学校があったら、受付事務局に連絡。プログラムを受けることが決まったら、店舗での体験日などの確定。テキストは誰でもHPからダウンロードできる。
プログラムは、年間通してできるほどの内容を用意しているが、先生がセレクトして好きなところだけ実施することができるようになっている。したがってエロスキー財団の職員が学校に出向いて授業をすることはない。あくまで店舗での実施を希望した学校だけ受け入れるスタイルとなっている。プログラム受講者数は今年度62,000余り。ものすごい人数をこなしている。
財団の職員は6名。とてもではないけれど自分たちが学校に行ったらこれだけの数はこなせないので、あくまでプログラムの提供に重きを置いているとのこと。テキストは、先生用、子どもたち用の2つが作られている。学校・子どもからの高評価を得ているらしい。また生産者を訪ねるプログラムもある。しかし店舗や生産者が近くにいないこともあるので、その場合はビデオで体験の補完ができるようにビデオ教材も作られていた。プログラム作成にあたっては、スペイン全土の食関連の統計データを用い、7,000サンプルものアンケート調査も実施したとのこと。事実データに基づいたプログラム作成は、素晴らしいと思った。またこれらのデータ検証・プログラム作りには専門家の意見を聞くことが極めて大事であり、そうでないと革新的な新しいことはできないともおっしゃっていた。これはその通りで見習うべき視点だと感じた。
これらの取組を続けるうちに支援団体も増え、ユニセフ、WWF、医療機関などから協賛を得ているとのこと。我々もやはりWin-Winの関係で、プログラム開発が出来る専門機関の開拓は、質の高いプログラムの作成・実施に欠かせないのだと感じた。そして財団本体は、複数のプロジェクトを有機的に機能できるように運営管理する能力が必要だと感じた。日本国内だけでなく、世界との生協・期間とのコラボレーションを視野に、業務を進めて行くべきだと感じた。
2016年3月8日(火) 星野浩美